[ 寺院 ]
海を越えた祈りが宿る
奈良・唐招提寺
Visit the Land of Eternity
奈良・唐招提寺
海を越えた祈りが宿る寺院
創建は、今から遡ること1200年ほど前。
仏教伝来のため、中国の地から幾度もの苦難を乗り越え、日本の地に辿り着いた鑑真和上によって開かれた。
来日後、奈良・東大寺で5年を過ごし、朝廷より旧宅を賜った鑑真和上は、この場所を「唐招提寺」と名づけ、仏教の戒律を学ぶ人のための道場を開いた。
晩年の5年をこの地で過ごし、日本人の弟子を集め、自らの手で多くの僧を熱心に育てたと伝えられる。
日本の本格的な仏教の始まりの記憶に触れることの出来る寺院である。
名前に込められた想い
寺院の名称の「招提」という言葉は、古代語の一つであるサンスクリット語で「四方僧伽(しほうそうぎゃ)」という意味を表す「チャートゥルディシャ・サンガ」という言葉が由来となった。
「四方僧伽」とは、仏教の開祖である釈迦が唱えた、全ての仏教徒たちへの想いが込められた言葉。
僧の集まりとは、教団の垣根を越えて世界中の人々が手を取り合い、和合するための集い(サンガ)であるという想い。
釈迦のまなざしの先にあった、真理に根差した平和への想いが込められた言葉であったのだ。
そのサンスクリット語の「チャートゥルディシャ・サンガ」の音の響きを日本語で写し、付けられたのが「招提」という名前であった。
その言葉を名づけた鑑真和上の心の中には、遥かな未来を見据えた平和への想いが込められていたのではないだろうか。
世界を照らす祈り
寺院の門をくぐると、目の前には真っ直ぐに開かれた、長い参道が広がる。
その参道の先には、唐招提寺の中心となる建造物「金堂」が建っている。
ギリシアのパルテノン神殿とも並び称される、美しい円柱に支えられた「金堂」は、寺院建築の傑作とも謳われる建造物だ。
その中には、三つの大きな仏像が収められ、中央には「盧舎那仏(るしゃなぶつ)」と言われる仏像が鎮座する。
不思議な響きを持つ、この仏像の名前は、サンスクリット語「ヴァイローチャナ」という言葉の響きを日本語で表した「毘盧遮那(びるしゃな)」という言葉が由来になった。
「毘盧遮那(びるしゃな)」とは、太陽を意味する言葉。
その名の通り、太陽のように世界の隅々まで人々を照らし、真理へと導いてゆくという想いが込められた仏像である。
宇宙そのものを表現した途方もない存在として、宇宙仏とも言われているのだ。
「招提」という言葉に込められた平和への想い、そして寺院の中心から世界を照らす途方もない祈りが込められた「盧舎那仏(るしゃなぶつ)」。
唐招提寺には、時を越え、真理へと至る記憶が今も変わることなく残されているのだ。
- text/photo STUDIO HAS
- photographer Taishi Yokogawa
Information :
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京都府庁旧本館
address : 京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町
Reference :
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「松室重光と古社寺保存(日本建築学会計画系論文集 第613号)」
- 著者:
- 清水重敦
- 出版:
- 日本建築学会
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「桜のいのち庭のこころ 」
- 著者:
- 佐野藤右衛門
- 聞き書き:
- 塩野米松
- 出版:
- ちくま文庫
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text/photo :HAS Magazineは、旅と出会いを重ねながら、それぞれの光に出会う、ライフストーリーマガジン。 世界中の美しい物語を届けてゆくことで、一人一人の旅路を灯してゆくことを目指し、始まりました。About : www.has-mag.jp/about
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